
「債務整理をすれば督促は止まる」と聞いていても、
- 「実際はいつ止まるの?」
- 「今日も電話が来ているけど、本当に大丈夫?」
- 「もし止まらなかったらどうしよう…」
と不安になっている方は多いと思います。
結論からいうと、債務整理を専門家(弁護士・司法書士)に依頼し「受任通知」が債権者に届くと、消費者金融やクレジットカード会社からの督促は原則としてストップします。ただし、
- 手続きの種類(任意整理・個人再生・自己破産)
- 債権者に通知が届くタイミング
- そもそも債務整理の対象になる債権かどうか
によって、電話や督促が止まるまでのスピードや範囲には違いがあります。
この記事では、債務整理で督促が止まる仕組みとタイミング、止まらない場合の原因と対処法、「止まるもの」と「止まらないもの」の違いまで、できるだけ分かりやすく解説します。
この記事で分かること
- 債務整理をすると、なぜ督促が止まるのか(受任通知の仕組み)
- 任意整理・個人再生・自己破産ごとの「督促が止まるタイミング」
- 督促が止まらないときによくある原因と、すぐできる対処法
- 債務整理をしても「止まらない」税金・公共料金などの支払い
- 不安が強いときに読んでおきたい関連ガイド
債務整理をすると督促は止まる?結論:受任通知が届いた時点でストップします
最初に押さえておきたいのは、「債務整理=督促が止まる」のではなく、「受任通知=督促が止まる」という点です。
受任通知とは?──債権者に「これ以降は本人へ督促禁止」を伝える文書
受任通知とは、弁護士・司法書士が「この人の債務整理を正式に受任しました」と債権者に知らせるための文書です。受任通知が届くと、
- 貸金業法・弁護士法などの規定により、債権者は本人への直接の督促を控える義務が生じる
- 今後の連絡窓口は本人ではなく代理人(弁護士・司法書士)になる
という扱いになるため、電話・SMS・督促状などが止まる、という仕組みになっています。
任意整理・個人再生・自己破産で督促が止まる仕組みの違い
債務整理には大きく分けて「任意整理」「個人再生」「自己破産」がありますが、どの手続きでも、
- 専門家が受任
- 債権者に受任通知を送付
という流れは共通です。
そのうえで、個人再生や自己破産では、裁判所に申立てを行うことで、法的な意味でも「強い督促禁止の効果」が働きます。一方、任意整理は裁判所を使わない代わりに、受任通知+債権者との話し合い(和解交渉)によって督促を止めていきます。
債務整理の種類と基本的な違いについては、こちらの記事も参考になります。
➡ はじめての債務整理ガイド|任意整理・個人再生・自己破産の基礎知識
原則として電話・SMS・郵便での督促がすべて止まる理由
消費者金融やクレジットカード会社などの「貸金業者」は、法律によって厳しく規制されています。受任通知を無視して本人へ何度も電話をかけると、自社にとっても大きなリスクになります。
- 行政処分や指導の対象になる可能性がある
- トラブルがあれば弁護士会等への苦情・相談につながる
そのため、受任通知がきちんと届いた後もガンガン電話してくる業者は、むしろ少数派と考えてよいでしょう。
督促が止まるタイミング|最短いつから?
「いつ止まるのか」は、多くの方が一番気になるポイントだと思います。ここでは、手続きの種類ごとに、督促が止まる目安を見ていきましょう。
① 任意整理:受任通知を送った当日〜数日以内
任意整理の場合、多くの事務所では
- 受任した当日〜翌営業日中に、債権者へ受任通知を発送・FAX送付する
という対応を取っています。
そのため、
- 早い業者だと「その日のうち」〜「翌日」には電話が止まる
- 遅くとも数日〜1週間程度で、ほとんどの業者が督促を停止する
のが一般的なイメージです。
② 個人再生:受任通知で即ストップ、申立て後は法的効力も加わる
個人再生の場合も、まずは任意整理と同じく受任通知によって督促が止まります。その後、裁判所に再生手続きの申立てを行うと、
- 債権者は裁判所の手続きの中で権利を主張することになる
- 個別に電話や手紙で「払え」「一括で払え」と迫る意味がなくなる
ため、実務上、督促はより確実にストップします。
③ 自己破産:受任通知+申立ての段階で確実に止まる
自己破産も同様に、
- 受任通知→実務上の督促ストップ
- 破産手続き開始申立て→法的な意味でも個別の取り立てが制限される
という流れになります。特に破産手続きが進めば、債権者は個別に取り立てるのではなく、裁判所を通じた手続きの中で対応することになるため、電話や督促状が続くことは基本的にありません。
債権者によって反応速度が違う理由(大手消費者金融 vs 中小業者)
同じタイミングで受任通知を送っても、
- 大手消費者金融・大手信販会社
- 中小の貸金業者・債権回収会社
などによって、督促が止まるまでのスピードには違いが出ることがあります。社内の事務処理フローや、受任通知に対応する部署の体制などが異なるためです。
そのため、「一部の業者からの電話はすぐ止まり、別の業者からはまだ来る」という期間が数日生じることもありますが、多くの場合、時間の問題で徐々に止まっていきます。
督促が止まらないときの原因と対処法
中には、「債務整理を依頼したのに、まだ電話がかかってくる」というケースもあります。その場合は、何らかの原因があります。
原因① 受任通知がまだ届いていない(郵送の遅れ・FAX未確認)
一番多いのは、単純に「債権者側に受任通知がまだ届いていない」というケースです。
- 郵送に時間がかかっている
- FAXで送ったが、債権者側の担当部署でまだ確認できていない
- 営業時間外・休日を挟んでいる
といった理由でタイムラグが生じることがあります。
依頼の翌日〜数日間は、多少のタイムラグがある前提で考えておくと、メンタル的にも少し楽になります。
原因② 債権者が委託業者(回収会社)に引き継ぐ直前だった
支払いがかなり遅れている場合、債権者が債権回収会社(サービサーなど)へ移管する直前のタイミングと重なってしまうことがあります。
- 元の債権者と回収会社の間で情報が行き来している
- 受任通知の送付先がどちらか一方にしか届いていない
といった理由から、一時的に督促が止まりにくくなることもあります。この場合も、事務所側が送付先を確認し、必要であれば再度通知を出すことで対処していきます。
原因③ 過去の住所宛に返済催告が届いている
引っ越しをして住所変更をしていない場合、旧住所宛に書面での督促が届き続けていることもあります。電話やSMSは止まっているのに、後から「昔の住所に一括請求の手紙が届いていた」と発覚するパターンです。
住所変更の有無や、どの連絡先が使われているかは、相談時に事務所へ正確に伝えておくと安心です。
原因④ 闇金・非正規業者からの借入である
いわゆる「闇金」や、貸金業登録をしていない違法業者は、受任通知や法律を無視して取り立てを続けてくることがあります。この場合は通常の債務整理の枠を超えた対処が必要です。
長く延滞を続けていると、違法業者でなくても遅延損害金が膨らみやすく、精神的にも追い詰められがちです。延滞と遅延損害金については、こちらの記事も参考になります。
すぐに止めたい場合の対処法(弁護士・司法書士に連絡 → 再通知 → 反応確認)
「依頼から数日経っているのに、明らかにおかしいほど電話が続いている」という場合は、我慢せずにすぐ事務所へ状況を伝えましょう。
- どの業者から、いつ、どのような内容で電話や書面が来ているか
- 「受任通知を出したはずの相手」かどうか
を共有することで、事務所側が
- 受任通知の到達状況を確認する
- 必要に応じて再度通知を出す
- 悪質な場合は、やり取りの内容を踏まえて追加対応を取る
といった動きを取ることができます。
※受任通知後でも、まれに自動音声の架電システムだけが停止するまで時間差が出ることがあります。この場合も、手動の督促とは異なり通常はすぐに止まるため、気になるときは事務所に相談してみてください。
督促が止まらないときは、一人で抱え込まないでOK
「迷惑をかけたくないから…」と事務所への連絡をためらう方もいますが、督促が止まらないときの調整はまさに弁護士・司法書士の仕事です。胸の内にため込まず、状況をそのまま伝えるだけでも大きな一歩になります。
督促が止まるとどう変わる?債務整理後の生活の変化
実際に督促が止まると、多くの方がまず「精神的な解放感」を感じます。
電話が鳴らなくなるだけで精神的負担が大幅に軽減
毎日のように、あるいは一日に何度も電話やSMSが来ていると、
- スマホの着信音にビクッとする
- 見知らぬ番号に出られない
- ポストを開けるのが怖い
といった状態になることも珍しくありません。
そこから解放されるだけでも、「やっと呼吸ができるようになった」と感じる方は少なくありません。
返済計画の見直しがスタートし、生活再建しやすくなる
督促が止まると、
- 「今月どこにいくら払うか」を日々悩み続ける状態から解放される
- 落ち着いた状態で、返済計画(和解案)を一緒に考えられる
ようになります。ここからが「生活再建のスタートライン」です。
返済が続けられない場合は別の手続きへ移行できる
任意整理を検討していても、状況によっては、
- 個人再生で元本を大きく減らした方が良い
- 自己破産でリセットした方が現実的
というケースもあります。
「任意整理をやってはいけない人」「別の手続きが向いている人」の判断目安は、こちらの記事も参考になります。
➡ 任意整理をやってはいけない人の特徴とは?向いていないケースの見分け方
督促が止まっても「止まらないもの」もある|誤解しやすいポイント
債務整理をすると、すべての支払い・督促が止まるわけではありません。「対象になる借金」と「対象外の支払い」を分けて考える必要があります。
役所・税金・国保・NHKなどの公的料金の督促は止まらない
債務整理で対象になるのは、基本的に
- クレジットカードのショッピング利用・キャッシング
- 消費者金融・カードローン
- 銀行系カードローン、フリーローン
などの「私的な債務」が中心です。
一方、次のようなものは、債務整理をしても原則として対象外になることが多いです。
- 税金(住民税・所得税など)
- 国民健康保険料・国民年金保険料
- NHK受信料
これらは「公的な性質を持つ支払い」のため、債務整理とは別枠で考える必要があります。滞納がある場合は、役所の窓口等で分納相談などを行うことが大切です。
家賃・光熱費・携帯代などの「日常債務」は対象外になることも
現在進行形で生活に直結している費用(家賃・電気・ガス・水道・携帯電話など)は、債務整理の対象に含めないことも多いです。これらは支払いを止めると、即「生活に支障が出る」ものだからです。
どこまでを債務整理に含めるかは、収支のバランスや生活状況によっても変わるため、事前の相談の際にしっかり確認しておきましょう。
差し押さえは別制度(今回のテーマと別物)
給料や口座の差し押さえは、債権者が裁判所を通じて行う「強制執行」という別の手続きです。督促が止まるかどうかとは仕組みが異なります。
すでに差し押さえが行われている場合や、そのリスクが高い状況については、こちらの記事も参考になります。
➡ 強制執行・差し押さえとは?給料や預金が差し押さえられる仕組みを解説
それでも不安な人へ|「本当に止まるの?」と感じる理由と向き合い方
頭では「受任通知が届けば止まる」と分かっていても、気持ちが追いつかないことも多いと思います。
長期間の督促で「電話恐怖症」のような状態になっていることがある
長い期間、督促電話やSMS、督促状に追われていると、
- 知らない番号を見るだけで動悸がする
- インターホンやポストの音に過敏になる
といった「電話恐怖症」に近い状態になることもあります。その状態だと、「本当に止まるのかな?」と疑ってしまうのは、ある意味当然の反応です。
ネットの体験談で“不安が増幅する仕組み”
インターネット上には、
- 「債務整理をしたのに電話が止まらなかった」
- 「ひどい取り立てを受けた」
といった体験談もありますが、その多くは事情や条件が特殊だったり、かなり前の情報だったりします。
不安なときほど、極端な情報ばかり目についてしまいます。自分のケースにそのまま当てはめてしまわず、今の法律と実務に沿った情報かどうかを確認することが大切です。
不安を減らすには、手続きの流れと自分の状況を知ることが重要
不安が強いときは、
- 「自分はどのくらい危ない状態なのか」
- 「任意整理・個人再生・自己破産のどれが現実的なのか」
といった「自分の立ち位置」が分からないことが原因になっていることも多いです。
任意整理に踏み切れない心理や、迷いとの向き合い方については、こちらの記事も参考になります。
➡ 【任意整理に踏み切れない理由】迷い・不安の正体と決断する前に知るべき現実とは?
「止めたい」と思ったときが、動き出すタイミングです
督促がつらい、電話が怖い──そう感じたときこそが、債務整理を含めた対策を検討するタイミングです。今すぐ結論を出す必要はありません。「自分の状況で何ができるのか」を聞くだけでも、見える景色は大きく変わります。
よくある質問(FAQ)|督促が止まるタイミングの疑問を解消
Q. 今日依頼したら今日中に電話は止まりますか?
受任した当日中にFAXなどで受任通知を送る事務所も多く、早ければ当日〜翌日には督促が止まることもあります。ただし、債権者側の確認タイミングや、営業時間・休日を挟むかどうかによっても変わるため、確実に「今日中に100%止まる」とは言い切れません。
Q. 何回も電話が来る業者でも本当に止まりますか?
貸金業者は法律上の規制を受けているため、受任通知を無視して執拗に取り立てを続けるのは大きなリスクになります。悪質な対応を続ける業者は少数派で、多くの場合、通知が届きしだい督促を止めます。もし明らかに不適切な取り立てが続くようであれば、事務所を通じて対応を相談しましょう。
Q. 督促が止まらない場合はどこに連絡すればいい?
まずは債務整理を依頼した弁護士・司法書士の事務所に連絡し、「どの会社から・どのような内容で・いつ連絡が来ているか」を共有してください。受任通知の到達状況を確認し、必要に応じて再送付や追加の連絡を行ってくれます。
Q. 督促停止後に返済を再開する必要はありますか?
受任通知によって督促が止まったあと、勝手に独断で返済を再開するのはおすすめできません。今後の返済方針は、債務整理の手続き内容(任意整理・個人再生・自己破産)や和解の条件によって変わるため、必ず事務所の指示に従いましょう。全体の返済計画に影響が出ることもあります。
まとめ|督促は必ず止まる。大切なのは“通知が届くまでの時間”を理解すること
債務整理を専門家に依頼し受任通知が届けば、消費者金融やクレジットカード会社からの督促は原則として止まります。ただし、
- 債権者ごとの対応スピード
- 郵送・FAXのタイムラグ
- 対象外の債権(税金・公共料金など)の有無
によって、「いつ・どこまで止まるか」は少しずつ違ってきます。
「本当に止まるの?」という不安は自然なことですが、一人で悩むよりも、状況をそのまま専門家に伝えることが一番の近道です。
督促が止まれば、ようやく生活再建のスタートラインに立てます。そこから先の歩き方については、次のガイドもあわせて読んでおくと、全体像がつかみやすくなります。
- 債務整理全体の選択肢を整理したガイド
➡ はじめての債務整理ガイド|任意整理・個人再生・自己破産の基礎知識 - 債務整理をきっかけに人生を立て直した人たちのストーリー
➡ 【債務整理で人生は変わる】借金から再スタートした人たちの実例と復活ストーリーまとめ - 任意整理に踏み切れないときの心理と判断軸
➡ 【任意整理に踏み切れない理由】迷い・不安の正体と決断する前に知るべき現実とは?
状況が深刻になる前に、次のガイドで「自分はどの手続きが向いているのか」を確認しておきましょう。





































