債務整理をすると借金返済の負担を減らすことができますが、借金の中には債務整理しても返済負担を減らすことができなかったり、借金の免責を得られないというものもあります。
何となく債務整理をすると全ての借金が減額対象になったり、自己破産すればどんな借金も全て返済の必要がなくなると思っている方も多いと思います。
しかし実際には自己破産などの債務整理をしたとしても、そのまま支払い義務が残る借金も存在します。
自己破産など債務整理しても残る借金がある!
借金の中には非免責債権というものがあり、この非免責債権という借金は自己破産しても返済義務がなくならないという特徴があります。
債務整理しようとして、まったく返済負担が減らない借金があるというのは非常に厳しいことで、借金の大部分を非免責債権が占めているような状況だと、債務整理の効果をほとんど得られない可能性があります。
特に自己破産しても借金なくならないというのは非常に大きなことで、自己破産するくらい借金で追い詰められているのに、その自己破産でも借金負担が減らないというのはかなり深刻な借金ということになります。
では非免責債権とはどのような借金のことなのでしょうか?
債務整理しても借金が残る非免責債権とは?
自己破産などの債務整理しても借金返済の負担が残る非免責債権は下記の8つのパターンがあります。
下記に該当するような借金がある場合には注意しましょう。
非免責債権とは
- 社会保険料・税金
- 養育費
- 損害賠償金の一部
- 慰謝料の一部
- 生活保護費の徴収金
- 雇用主が支払う給与
- 刑罰などによる罰金
- 債権者一覧に記載し忘れた借金
社会保険料・税金
社会保険料を含めた税金は非免責債権の代表的な借金になります。
国民健康保険料や国民年金などの社会保険料や、所得税や住民税などの税負担は私のが負担する税金の中でも負担が重くて身近な税金です。
こうした社会保険料や税金に関しては、自己破産を含めた債務整理手続きをしたとしても返済負担はなくならないです。
また滞納を続けると強制執行で資産や給料の差し押さえされる可能性があり、普通はこうした場合、個人再生や自己破産することによって強制執行を止めることができますが、社会保険料や税金に関しては効果がないです。
そのため税金は地道に支払っていく必要があります。
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養育費
子供の養育費も非免責債権になっており、滞納している部分を含めて将来の部分も、自己破産などの債務整理手続きで負担を減らすことはできないです。
養育費は子供の生活に必要なお金という側面があるので、普通の借金みたいに債務整理で返済負担が軽くなったら、そのしわ寄せが子供の生活に降りかかることになります。
そのため養育費は自己破産などの債務整理では返済負担を軽くすることができません。
まあ、養育費に関しては債務整理で返済負担が減らなくても仕方ないという感じがしますね。
養育費の支払いは親の責任の一端でもあるので、それを簡単に債務整理で免除するわけにはいかないですからね。
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損害賠償金の一部
損害賠償金は基本的によほど悪質なケース以外は自己破産などによって返済負担を軽くすることができます。
損害賠償金に関しては色々な場面で発生する可能性があるので、なかなか説明しにくいですが、交通事故の場合だと、悪意による不法行為や重大な過失によるものは自己破産などの債務整理でも免責対象にならないです。
具体的には無免許運転や飲酒運転などのような悪質なケースでの交通事故が自己破産しても免責されない事例としてわかりやすいと思います。
逆に被害者の過失割合が大きかったり、刑事責任が問われないような事故での損害賠償金の場合は自己破産による免責が認めらえる可能性があります。
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慰謝料の一部
離婚による慰謝料の負担も大きな借金になり、養育費と一緒に請求されると一気に経済状況が悪化するので慰謝料が払えなくて自己破産を検討する方は多いです。
慰謝料の場合は、DVなどの違法性があるようなケースを除けば、よほど悪質でない限りは自己破産で支払いを免責することができます。
つまり普通の不倫が原因での離婚による慰謝料の場合は、自己破産によって支払いが免除可能になるということです。
不倫などの不貞行為は民法上は違法ですが、刑事罰が科せられるわけではないので悪質とはいいがたいということだと思います。
逆にDVは明らかに暴行罪や傷害罪が適用されるようなケースなので、この辺りに悪質性の違いがあるのかなと感じます。
生活保護費の徴収金
生活保護に不正受給があった場合には、そのお金を返還する必要があります。
その際に「返還金」になるのか「徴収金」になるのかによって、非免責債権になるかが変わってきます。
返還金になるか徴取金になるかは状況によって違ってくると思いますが、明らかに不正受給を意図していたようなケースだと徴収金になると思ったほうがいいです。
返還金の場合は非免責債権にならないので、自己破産することによって返済義務がなくなるので一般の借金と同じ扱いになります。
一方で徴収金の場合は非免責債権になるので、自己破産しても支払い義務が残ることになります。
雇用主が支払う給与
雇用主が支払う給与は非免責債権に該当し、雇用主が自己破産したとしても支払い義務が残ることになります。
これは労働者保護の観点からも、自己破産しても支払い義務が残るというのは当然と言えば当然感じがしますね。
給料の支払いが自己破産で免責されたら、悪質な雇用者ならこの制度を悪用しそうな感じがしますしね。
刑罰などによる罰金
刑罰などによる罰金も非免責債権に該当します。
これも当然ですよね。自己破産で支払いが免除されてしまったら刑罰による戒めにならないですからね。
基本的に税金を含めた国が関係しているな債務については、自己破産などの債務整理手続きをしたとしても免除されない可能性が高いです。
まあ、罰金に関してはそこまでとんでもない金額を請求されることはないと思うので、優先的に支払ってしまった方がいいです。
債権者一覧に記載し忘れた借金
自己破産などの債務整理をする場合には、どのような借金があるのかまとめるために債権者一覧を作ることになります。
債権者一覧は債務整理手続きに利用されるものなので、一覧に載せ忘れたような借金は自己破産などの債務整理をしても返済負担は減らず非免責債権になってしまいます。
忘れている借金があると免責対象から外れてしまうので、しっかりと債権者一覧には漏れがないように注意しましょう。
非免責債権と免責不許可事由の違い
非免責債権と免責不許可事由をごっちゃに考えてしまっている方って結構多いです。
非免責債権と免責不許可事由のは全く別物です。
免責不許可事由は自己破産しても裁判所の判断で免責が下りない事例ですが、場合によっては裁量免責よって免責が下りる可能性があります。一方で、非免責債権は借金が免責されることはないです。
たまに「非免責債権が借金含まれていると免責不許可事由に該当して自己破産できないのでは?」と言う方がいます。確かに非免責債権は自己破産でも返済負担はなくなりませんが、それ以外の借金は自己破産で免責できる可能性はあります。
そのため非免責債権があるからいって免責不許可事由になってしまって自己破産できないということはないです。
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非免責債権が払えない場合
非免責債権は自己破産などの債務整理手続きをしたとしても返済負担が減らないので、地道に返済していくしか方法はないです。
ただ人によっては収入が足りなくて滞納してしまっているという方もいると思います。
そんな非免責債権が払えない状況になってしまった場合にはどうすればいいのでしょうか?
結論を言ってしまうと「相談」することが一番の解決策になります。
税金や社会保険料などについては市役所や税務署に相談することで、分割払いを認めてもらったり、解決方法を相談することが重要になります。
養育費などについても、収入が減ってしまったなどの事情があれば減額交渉をすることも可能で、その結果、毎月の支払額が減額される可能性もあります。
まずは一人で抱え込まずに相談することが重要になってきます。
まとめ
非免責債権は最強の債務整理方法である自己破産でも免責されない借金ということもあり、これらの借金はできるだけ優先的に返済していく必要があります。
損害賠償金や慰謝料については、状況によっては非免責債権になったりならなかったりするので、自分のケースでどうなるのかは弁護士や司法書士に相談する必要があります。
ただ社会保険料や住民税などの税金はわかりやすく非免責債権として支払い負担が残るので、税金関係の借金を滞納しているなら、他の借金よりも優先して支払うようにしましょう。
税金は支払いが遅れると遅延損害金も発生するので、支払いが遅れていくほど負担が大きくなってしまいます。
こうした非免責債権が借金に含まれているようなケースでも、借金返済に困っているなら一度は専門家である弁護士や司法書士に相談したほうがいいと思います。
下記で都道府県別におすすめの法律事務所をまとめているので参考にしてください。